第5回 『アベレージ』について
ソフトテニス愛好家の皆様へ、今回は『アベレージ』の巻です。
『アベレージ』って、聞かれたことがありますか? 日本語で『平均』と云う意味ですよね。何の平均かと言うと、選手によるポイント率とミスの率の平均なんです。
そりゃ一体何?
それではこれから、その『アベレージ』について説明したいと思います。
1.はじめに
ソフトテニスにおいて、記録を取る人が多くなって来ましたが、それを基にアベレージを出すということは、これまでに行われていませんでした。
積み重ねた練習の成果をより速やかに上げるために、記録を取り、それを整理研究して、自分の長所及び短所を客観的に明らかにして、長所は益々生かし、短所を改良して、一日も早く理想的な自分のテニスを作り上げていくことが大切であると思います。
また、大きな大会で、他の選手達の実力を把握し、長短所を知ると共に、その試合の内容を多角的に分析して、ゲームの運び方、ポイントでの動き・掴み方等を研究することは、試合に勝つための大きな要素の一つであると考えています。
なお、ここで紹介する『アベレージの算出法』は、龍谷大学元教授 呉 啓三郎氏が考案されたものです。
2.アベレージ
(1) アベレージとは
アベレージとは、試合において攻撃面と守備面のバランスがどうであったかを知る客観的な指標です。多くの試合の成績を集計することにより、自分のプレースタイルを把握することが出来ます。また、それによりパートナーと戦法を考えて見て下さい。ペアを選ぶ参考にもなります。もちろん好き嫌いはありますが。
攻撃性は、ポイント率(以下P率)の高さに現れ、防御力、ミスの少なさは、ミス率(以下M率)の高さに現れます。そして、P率とM率の平均値がアベレージ(以下Ave)で、Aveの高さはその選手の得点能力の高さを示します。
(2) 算出方法
Aveは、ゲーム数(G)、ポイント数(P)、ミス数(M)から算出します。なお、ファイナルゲーム(7回ゲーム)の場合は、G=7ではなくG=8で計算します。
例えば、4−2で試合が終り(G=6)、前衛がポイント6本、ミス5本、後衛がポイント2本、ミス7本であった場合
表1 算出方法
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数 |
項目 |
算出方法 |
結果 |
前衛 |
P=6 |
P率 |
P/2G |
6/12=0.50 |
M=5 |
M率 |
G/4M |
6/20=0.30 |
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G=6 |
Ave |
(P率+M率)/2 |
0.40 |
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後衛 |
P=2 |
P率 |
P/G |
2/6=0.33 |
M=7 |
M率 |
G/2M |
6/14=0.43 |
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G=6 |
Ave |
(P率+M率)/2 |
0.38 |
表に示したように、前衛は、P率0.50、M率0.30、Ave0.40
後衛は、P率0.33、M率0.43、Ave0.38となります。
(3) 記載例
(ただ簡単に、ポイント、ミス(○×)だけ記録してもかまいません)
表2 記載例
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後衛A |
前衛B |
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前衛C |
後衛D |
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S |
1FN× CSA○ |
AFV○ |
C−2 |
EBRLB× |
3BRS× DFsp○ |
R |
R |
4FAt○ |
BFol○ 6FSmS× |
3−D |
AFSm○ FBV○ GFmp○ |
@Fneti○ 5DF× |
S |
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省略 |
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P=2 M=5 0.33 0.60 Ave=0.47 ファーストサービス率 8/12=0.67 |
P=7 M=2 0.58 0.75 Ave=0.67 ファーストサービス率 4/6=0.67 |
C≡2 |
P=6 M=4 0.50 0.38 Ave=0.44 ファーストサービス率 7/10=0.70 |
P=3 M=7 0.50 0.43 Ave=0.47 ファーストサービス率 9/11=0.82 |
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第一ゲーム
1FN× : 1本目、フォアのストロークがネットアウト×
AFV○ : 2本目、フォアボレーでポイント○
3BRS× : 3本目、バックのレシーブがサイドアウト×
CSA○ : 4本目、サービスエースでポイント○
DFsp○ : 5本目、フォアで前衛のサイドパッシングでポイント○
EBRLB× : 6本目、バックでレシーブロビングがバックアウト×
○囲み数字はファースト、○なし数字はセカンドサービス
DF:ダブルフォルト、At:アタック、mp:ミドルパッシング、
Fol:フォロー、neti:ネットイン、Sm:スマッシュ
要するに分かれば何でも良い。
その他、サービスがファーストかセカンドかを記録し、ファーストサービス率も計算しておきます。
また、前衛のポイントが巧妙な動きや巧打による場合等、詳細を補っておき、短評も書き入れておくと良いでしょう。
(4) 基準
平均して常にP率、M率が5割をオーバーし、Aveも常に5割以上になれば攻守とも備えた一流選手と言えます。
4割以上であれば合格ですが、3割以下であればもう少し練習が要りますね。
2割以下であれば、『ちょっと加古川でも飛び込んで顔洗ってこい』と言いたくなります。加古川が遠い場合は近くの川に♪♪♪
ちなみにC−0で負けて、後衛のポイントが0、ミスが10本、前衛のポイントが1本、ミスが5本の場合には、このような率になります。
(5) P≧Mで98%勝ち試合
後衛と前衛のPの合計とMの合計が同じ場合、過去の経験から98%勝ち試合になっています。
そこでP≧Mの記録を出すためには、表1の試合の場合、6ゲームですから、もし前衛のポイントが6本、ミスが3本、後衛はポイントが3本、ミスが6本であれば、9=9となります。また、全ての率が0.50で、もちろんAveも0.50と申し分ない試合であったと言えるでしょう。
つまり、前衛はミスをもう2本少なく、後衛はポイントをもう1本多く、ミスをもう1本少なくしていたなら、5割になっていました。それが何であったかを反省するところに、その人の上達の秘密が隠されています。
(6) 前衛は5割のペースを
前衛は、ポイントを1Gで1本取り、ミスは2Gで1本以内に抑えるペースを保持して行けば良いことになります。もちろん後衛の巧打によって甘くなったボールや相手のミスショットでポイントした場合もあります。
1ゲームが4−2で終わる確率は、約33%、4−1が約25%であることを考えると、5〜6本で1本ポイントすれば良い訳ですから、あんまり『がつがつ』する必要はないでしょ☀☀☀。
前衛のボレー、スマッシュは決定打に結び付きますが、必ず決めなければならないと思い込むのではなく、次のボールで決めれば良いという気持ちでプレーすれば、M率を高めることが可能と思います。
(7) 後衛も5割のペースを
後衛は、1Gでミスを1本以内に抑え、ポイントは2Gで1本獲得するペースを保持します。
後衛のミスの90%以上がレシーブを含めたグランドストロークであり、1Gにおいてそのミスを平均1本以内に抑えることが勝つための条件です。但し、サイドパッシング等でポイントを1本とれば、ミスは2本まで許される計算になります。
(8) パートナーとの関係
前衛、後衛が5割をマークする選手であれば、何時何処で組んで試合をしても充分実力が発揮できます。2~3回も一緒にゲームをすれば、コンビネーションは自然にうまく取れるようになります。
P率が高く、M率の低い後衛の場合は、M率の高い前衛と組んだ方がペアとしての強みを発揮する場合は多いでしょう。
現在の戦法では、M率の高い後衛が、P率の高い前衛と組んだ場合、常に安定した戦績を残せるでしょう。もちろん前衛のP率が高くなるのも、後衛さま♪がコントロール良く、自滅せず、配球良く打ってくれるからです。
前衛のポイントの内容を大きく分ければ、次の3つになります。
@
後衛が功打したためポイント出来たもの(パートナーの隠れたポイント)
A
相手がミスショットしたためポイント出来たもの(相手の隠れたミス)
B
自らの功打や巧みな動きによってポイントしたもの
言葉を変えて言えば、後衛は、持久力に富み、コントロール良く相手方の前衛に取られないように配球し、その上スピードと威力があれば、申し分なく、前衛は、常に状況を把握して、読みを深くして、敏捷に、自信を持って決断力良く動き、先手先手にゲームを運ばなければならないと言うことです。
3.試合の運び方
(1)先手必勝
5割同士のペアが対戦した場合、単純計算すると1G目は3対3でデュースになります。
後衛のP:0.5 M:1
前衛のP:1 M:0.5
相手方後衛のM:1 P:0.5
相手方前衛のM:0.5 P:1
3 対 3
1本の差がゲームを左右することになり、それが繰り返されて、最後にはやはり1本か2本の差で勝ったり、負けたりすることになります。
そこで、試合開始の1本目を如何にして得点するかということが、最初の大切なポイントになります。そのため、サービスであれば、先ずファーストを、場所を考えて打ち込むことが重要です。ダブルフォルトなんかしよったら、直ぐに荷物をまとめて実家に帰るか、『ぽかぽ』に行きましょう♨♨♨♨♨。
レシーブであれば、ファーストサービスに対して、ミスしないようにと頭から受身になってしまわないで、チャンスがあれば如何にして先手を取れるレシーブを返せるかを考えながら構えましょう。
また、セカンドサービスに対しても、一発で決めてやろうと思わないで、先手を取って次のボールで決めてやる位の気持ちで挑むことが大事です。
≪休憩≫
『ぽかぽ』は、兵庫県滝野町にあるアルカリ単純泉で、大人600円です。
効能はテニスが上手くなります。山手クラブの客坂選手が常連客です。
(2)2ポイント離す
サービス側で1−0、レシーブ側で0−1とリードすれば、次のポイントがまた大切なところで、ここで2−0あるいは0−2と2ポイント引き離せれば、ゲームを楽に掴むことが出来ます。
2ポイントの差をつけた後、仮に交互にポイントして行ったとすれば、4−2あるいは2−4のいずれかの形でそのゲームを獲ることが出来る訳です。
2ポイント離せば、次に相手側が得意とする戦法で攻められ、サイドを抜かれてポイントされたとしても、次にくる大切な場面で、相手の得意な打球をサイドで逆に封じ込めたりして、ポイントを奪える余裕を持つことが出来る。これが『ゲームを造る』ということです。
(3)2−1あるいは1−2から
2−1あるいは1−2とリードしている時、如何にして3−1あるいは1−3にするかが大きなポイントになります。
4.最後に
上達の鍵は、単に練習を繰り返すだけではなく、記録を取り、それを整理研究して、客観的に自分の長短所を明らかにして、長所は益々生かし、短所を改良するための練習を繰り返して行くところにあります。
ソフトテニスには、野球のように満塁ホームランがないので、一度に4点獲得は出来ません。
一本一本の得失点によって、ゲームが進行するので、まず一本を、そして如何にして二本離すかを考えて、ゲームを先行し、ゲームカウントも同じように、如何にして2ゲーム離すかが、一番大切なところです。
ゲームが非常に短いので、無意味なボールは一球たりとも打ってはならないことは、言うまでもありません。
相手の長短所、戦略・戦術等を知ると共に、常に相手の心理状態を見抜いて、充実したプレーを続けることが重要です。
余裕を持って、数種類の『決め球』を残せるようになれば、相当な力の持ち主と言えるでしょう。
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